2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

寒さ暑さ対策は熱移動の理論に基づいて⑨「夏の直達日射量」

グラフは、東京における夏至の直達日射量を表したものです。 グラフから読み取れるように、夏は圧倒的に水平面が受ける日射量が多くなります。 これは、夏の南中高度が高くなることによる影響です。 東京(北緯35度を仮定)を例に挙げると、夏至の日における…

寒さ暑さ対策は熱移動の理論に基づいて⑧「下方への熱移動に占める輻射の割合」

輻射熱(放射熱)の割合が極めて大きいのが、下方への熱移動です。 上から下へ熱が移動する場合において輻射熱(放射熱)が占める割合は、なんと93%にも及びます。 ですので、上から押し寄せてくる熱のほとんどが、輻射熱(放射熱)によって起きているのです。 …

寒さ暑さ対策は熱移動の理論に基づいて⑦「断熱材は熱移動にどんな効果がある?-Ⅱ」

断熱材は中に空気やガスを閉じ込めていますが、断熱材の素材(グラスウール、ウレタン、ポリエチレンフォームなど)だけでなく、空気やガスも電磁波を通します。 つまり、このことは断熱材が熱移動において多くの割合を占める輻射熱(放射熱とも呼ばれます)の影…

寒さ暑さ対策は熱移動の理論に基づいて⑥「断熱材は熱移動にどんな効果がある?-Ⅰ」

熱対策(寒さ暑さ対策)において、輻射熱への対応が重要であり、必要不可欠であることはご理解頂けたことと思います。 ところで、これまでにほとんどの建物に熱対策として使用されてきた断熱材は、どのような熱移動に効果的なのでしょうか。 空気の熱伝導の低…

寒さ暑さ対策は熱移動の理論に基づいて⑤「熱移動の3要素の割合」

熱移動の3要素における割合はどのようになっているのでしょうか。 そして、割合の大きなものに対処出来るか否かが、寒さ対策、暑さ対策に効果的かどうかということになってくるわけです。 それまでは熱移動の大半は対流と伝導で起こると考えられてきました…

寒さ暑さ対策は熱移動の理論に基づいて④「輻射熱(放射熱)」

熱移動の3要素のみっつめ、伝導熱についてです。 あらゆる物質は熱を放射(※1)しています。ただしそれは電磁波として放射されており、電磁波そのものに熱はありません。 しかし、電磁波が物質に衝突することで物質の分子が振動し、熱が放出されます。 電子…

寒さ暑さ対策は熱移動の理論に基づいて③「伝導熱」

熱移動の3要素のふたつめ、伝導熱についてです。 伝導熱とは、物質と物質が直に接することによって熱が移動することを言います。 熱は高温部から低温部へと伝わりますから、氷枕を当てれば頭が冷やされますし、湯たんぽを当てれば足が暖められるというわけ…

寒さ暑さ対策は熱移動の理論に基づいて②「対流熱」

熱移動の3要素のひとつめ、対流熱についてです。 対流熱とは、加熱された物質(気体、液体)が流動することによって熱が移動することを言います。 水や空気を暖める場合、暖められた水や空気は流体となって上昇(移動)します。 つまり、物質が熱を持って移動す…

寒さ暑さ対策は熱移動の理論に基づいて①「熱移動の3要素」

寒さ対策、暑さ対策を実施するうえで、冷熱や温熱がどのように伝わってくるのかをしっかりと把握しておくことが欠かせません。 そこでまず、熱移動の3要素、あるいは熱移動の3原則についておさらいしてみましょう. 一般的に熱は高温部から低温部へ移動する…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)21

写真は、ストーブによって熱を加えた箱の中の温度を比較する実験です。 片方は高性能遮熱材で造った箱、そして、もう片方は高性能断熱材で造った箱です。 それぞれの箱を家、ストーブを真夏の太陽と想定してみてください。 箱、つまり家の中の温度はいかがで…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)20

地球は温暖期と寒冷期を繰り返してきたことは分かっていますが、現在の温暖化は人類の活動による影響が多大であるという点において、過去の気温変動とは異なります。 そして、温室効果ガスの70%超をCO2が占めています。 しかし一方で、温暖化の原因が…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)19

冷房頼みにしない暑さ対策が実現すれば、適度な暑さで適度に汗をかかせる子育てがしやすくなり、汗をかけない、かきにくい体質の防止につながります。 その結果、熱中症へのリスクが高くなることを避けられます。 歳を重ねるにつれて冷房嫌いの傾向が高くな…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)18

日本の電力需要のピークは夏です。 そして、需要と供給のバランスが崩れると、大規模停電につながります。 だから、季節による電力需要量の差が大きいほど、大幅な調整が強いられます。 冬の電力需要は、温暖化と建物の高断熱化で減っていくことでしょう。 …

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)17

日本の場合、電気の80%程度は火力発電で賄われています。 ですので、電気だからCO2を排出しないということではありません。 そして、火力発電では、その燃料となるガス、石油、石炭が持つエネルギーの約63%は失われてしまいます。実は、非常に効率…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)16

温暖化に対処して行くためには「温暖化の抑制」と「温暖化への適応」という二つの面からのアプローチが不可欠です。 ところで、夏期における冷房の常態化は、温暖化の抑制と適応という観点からはどうなのでしょうか? 冷房を使えば使うほど電気を消費します…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)15

皆さん、2100年の最高気温など、気象はどのようになっていると思いますか。 2100年なんて、私には関係ない。 まあ、そうおっしゃらずに。 日本人の平均寿命、そして人生100年時代の到来を考えれば、乳幼児のお子さん方は2100年を経験する可能性…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)14

最近では気温40℃前後も当たり前のようになってきました。 また、南極と北極は、ともに20度超えを記録しました。 気温が高くなれば、冷房の使用頻度も高くなります。同じ温度設定で冷房するにも、外気温が高くなれば冷房負荷が高まります。 ということは…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)13

エアコンを冷房運転している際、室外機から暑い風が吹き出ていることは、ご存じのことでしょう。そして、それがヒートアイランド現象の一因になっています。 エアコンによる冷房の場合、室内を2度冷やすのに、約5度の内部熱を外部に出すに等しいと言われて…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)12

製品評価技術基盤機構は、2015年4月から2020年3月の5年間に、エアコンの誤った洗浄方法による火災などの事故が263件発生したと発表しました。 ペットを飼っていらっしゃるご家庭、24時間全館空調の家などは、留守中にエアコンを稼働させるケ…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)11

犬や猫は人間のように全身で汗をかくことが出来ません。そのために、熱が体にこもりやすく、体温調節が苦手なので、人間以上に熱中症のリスクが大きいと言われます。 ペットを残して日中留守になるご家庭では、省エネやエコ、経済性などの観点から考えれば、…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)10

お年寄りは冷房をあまり好みません。 2020年8月は東京都の熱中症死者が187人と過去最多となりましたが、その9割がエアコンを使っていませんでした。 冷房がないわけではありません。60歳以上世帯の冷房普及率は、単身世帯で84%程度、二人以上…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)9

一般的に、女性は男性より寒がりだと言われます。 それは、女性は男性より代謝が低いという体質によるもので、その結果、体内で男性ほど熱をつくらないのだそうです。 ですので、体感温度としては、女性は男性より2℃ぐらい低く感じるともいわれています。そ…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)8

冷房病の代表的な症状のひとつに、便秘が挙げられます。 ここに取り上げる表は、日本トイレ研究所が2016年に実施した「小学生の排便と生活習慣に関する調査」によるものです。 栃木県の小学生の4人に1人は便秘という調査結果が報告されています。 もち…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)7

2022年6月8日午前10時35分ごろ、神戸市のある小学校で体育の授業中に12人の児童が熱中症とみられる症状で体調不良を訴え、うち6人が救急搬送され、一人は重傷であったそうです。 しかし、神戸地方気象台によりますと、その日の神戸の午前10時…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)6

汗をかくということは体温調節においてとても大切なことです。 なぜならば、汗が蒸発する際には、100℃のお湯が0℃になるまでに放出する熱量の、実に5倍もの熱量を放出してくれるからです。 ですので、乳幼児期の子育てにおいて、適度に汗をかかせてあげ…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)5

汗をかく役割を果たしているのが能動汗腺ですが、その能動汗腺は3歳以降には増えることがないのだそうです。 汗をかかない汗腺を休眠汗腺といいますが、能動汗腺と休眠汗腺の割合は、生涯変わらないと言われているからです。 ということは、3歳までに汗を…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)4

温暖化に伴って、学校における冷房普及も進み、東京都の公立小中学校普通教室においては、ほぼ100%に設置されています。 また、宇都宮市では、暑さが厳しい中でも運動機会を確保するため、2021年の夏には宇都宮市立の全ての中学校の体育館に、空調機…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)3

暖房機器はエアコン以外にも色々とありますが、冷房に関しましてはエアコンだけといっても良いでしょう。 つまり、エアコンの普及は、冷房の普及でもあるということです。 二人以上の世帯で見ると、普及率は90%を超え、一世帯当たりのエアコン冷房保有台…

高まる熱中症のリスクと冷房の弊害(人と建物はどう適応していくのか)2

このグラフから読み取れるのは、熱中症死亡者数が、猛暑日日数と熱帯夜日数の推移に比例していないということです。 熱中症死亡者数が、2001年ごろから増加傾向にあるといっても良いでしょう。 ところで、住宅の次世代省エネルギー基準がスタートしたの…